2017 IRONMAN TAIWAN(レース当日〜レポート)
前回
AM3:00
起床
前日PM20:00就寝。緊張、興奮は無く、カフェイン摂取量小量だが寝付けず、21時の花火が寝不足に拍車をかける。
睡眠時間は5時間20分。22時頃まで意識のある状態が続き、体感睡眠時間はもっと短い。ノンレム睡眠の割合が高いのが幸い。
2週間前からテーパリングに入り、睡眠時間を8時間としている。前半1週間はRHRは徐々に下がって行き、リカバリー体制に入っている。この時体感でも身体が軽いのを感じる。
レースウィークに入ると喉風邪をひき、28日現地入りしてから浅い睡眠が続いた為RHRが上昇し48まで上がってしまっている。トレーニングしている時でもRHRは42程度なのでかなり高い数値だ。
朝ごはんは「サトウのご飯」3パックと味噌汁。前夜も同じメニューを食べた。
前夜からは消化に時間のかかるタンパク質、脂質、食物繊維を避け糖質と塩分を多く摂る。
便通はいつも良いのだが、現地に入ってから食物繊維を殆ど摂らなかったせいか、あまり出なかった。
DRYNAMIC™ MESH ドライナミック™メッシュ アンダーウェア | Millet
今回レースで初投入、ウェアの下にベースレイヤーmillet「DRYNAMIC MESH」を着る。これは厚みのあるメッシュ生地で、素肌とウェアとの間に空気の通り道を作る事でウェアを乾きやすくするもの。
AM4:00
ホテルからバスでT1に向かう。
バイクに夜露がかなり付いており、バイクカバーを付けるべきだった。
バイクにジェルとドリンクをセットし、空気を入れ直す。路面のコンディションは良いので100psi入れる。
ランのスペシャルニーズを預け、スイムオープンまで座って精神を整えるが周りが外国人ばかりで緊張感する。でも安川さんや佐々木さんと話す内に少しずつ解れてきた。助かる。
朝味噌汁も飲んでいるのでトイレが近くならないよう、この時あまり水を飲まないようにする。
このレースでの目標タイムは10時間50分。
去年のリザルトを見ると1位が10時間切りで2位3位は11時間30分前後だった為11時間を切れば1位になれる可能性はあると読んでいた。
失礼な話だが日本のロングで活躍している同じエイジグループの名前はエントリーリストに無いので日本人はノーマークだった。ドリンクを取り付ける為T1に入った時日本人では無い、同じエイジグループが良いバイクだった為警戒する。
スイム
体を冷やしても行けないので6時45分頃試泳に入るが、5分ほどしか泳ぐ時間がなかった。
スイムは一度陸に上がる2ラップ。予想タイムで3つのグループに各自分かれ、ローリングスタートで8人ずつ5秒間隔でスタートしていく。
予想タイム1時間10分の一番早いグループに入り、6列目程、左端に位置する。エイジがスタートし、30秒ほどでスタートした。
混雑はしておらず視界良好。中央からすぐロープ沿いへ寄る。第1部位を右折するとちょうど良いペースで泳ぐAWAシルバーキャップの選手を見つける。シルバーキャップならコース取りは問題ないだろうと、OSJ湘南の丸山コーチに教わったドラフティングを実践する。
前の選手の後方1m以内を維持し、ストロークを意識し、キックは6ビートで軽く、バランスを取る程度に打つ。前の選手の足にプルを当ててストレスを与えないように気をつけた。
波は無く、混雑もしていないのでヘッドアップは低く、前の選手が最短距離で泳いでいるか確認する程度で十分だった。
最後のブイを左折すると前の選手が最短ルートから外れたので一人ロープ沿いに寄り一週目を終える。コップ一杯の水を含みうがいをする。
1週目タイム35分
2週目。前を見るとさっきのシルバーキャップの人がまた前にいるのでまたドラフティングさせて頂く。肩周りがウエットスーツ擦れで痛くなってきた。
第2ブイを左折すると太陽が眩しく、ブイが見えにくくなった。この頃他の選手と密着状態になる事が増えたがドラフティングする事に専念し、ラインに入ってくる選手は身体を押したり身体をぶつけてポジションを維持した。
第3ブイをパスしてからペースを上げ、2週間目は最終ブイを右折してすぐロープ沿いに移動しスイムアップした。
ドラフティングのお陰で脚は全く使わなかった。
ベースレイヤー+トライウェアを着てのウエットスーツだが泳ぎにくいということは全くない。
タイム1時間13分
- エイジ2位
- 男性77位
- 総合90位
T1
水は浴びず、そのままトランジットエリアに向かう。途中ボランティアがレースナンバーを聞くので
ワン・ワン・ゼロ・サン!!
すみません、日本語混じりました。
1103と伝えスムーズにバイクバッグを受け取りテントに入り着替える。バイクシューズはバイクに付けていないのでテントで履く。
バイクはテントを出てすぐ目の前。バイクを確認するとバイクが全部残っていたのでエイジトップ通過だと確認する。
前輪固定のバイクラックからバイクを外そうとするが25cのタイヤだとラックにハマって抜けず、グイッと引っ張って引き抜く。
スイムで消費した分を補給する為、バイクのトップチューブに貼り付けているパワーバージェルをバイクを押しながら飲む。
タイム4分32秒
バイク
補給食
- オリジナルジェル1600kcal
- 水
バイクで固形を摂るとランの時消化不良を起こして下痢するのでジェルのみで、20km間隔で摂る。GARMINウォッチに距離アラートを設定しておくと忘れない。
オリジナルジェルの紹介(後日リンク追加)
僕の場合100km走るのに800kcalを必要とする。レースペースなので少し多めに持つ。必要カロリーは十人十色で、変動もするので練習からレースと同じ補給食を使い、研究するしかない。
オリジナルジェルにはナトリウムを追加しているのでドリンクでナトリウムを摂ることはない為、水。
エイドは約20km毎だが早々に喉が乾く、フロントハイドレーション分を早々に飲み切り、リアボトルをフロントに移し計画的に飲む。
第1エイドで水を2本貰う。エイド以外でゴミを捨てると失格と説明会であったが、ダストシューターがエイドに近く、フロントハイドレーションに補給して、リアボトルに差していると間に合わず、仕方ないので背中のポケットに空のボトルを入れる。
雲ひとつない30度を超える熱さと湿度で、予定より早いペースでドリンクが無くなる。エイド手前で一口分残る位のドリンク消費が理想。
このままだと脱水により発汗が減り、熱中症になりやすくなる為、第2エイドではボトル3本受け取り背中のポケットに入れた。また脱水を懸念して水とスポーツドリンクを両方受け取った。浸透圧の関係でスポーツドリンクはそのまま飲むより薄めた方が運動中の吸収率が上がるのでスポーツドリンクだけ飲む事はしない。
水を飲み過ぎるとトイレでタイムロスになるが、この暑さだと一歩間違えば 即熱中症になる為、しっかりと水分補給をした。
100km程でトイレに行くだろうと予想していたが、バイクパートではトイレに行くことはなかった。ちょうど良い摂取量とも言えるが、紙一重なので運が良かった。
スイムを前の方からスタートしたお陰でパックは無く、抜くために脚を使う事はなかったが40kmを過ぎると大腿四頭筋が張ってくる。踏み過ぎた気はしなかったが、変速をもっと細かくして脚の負担を減らすよう心がけた。
バイクコースは街から郊外出るコースなのだが街では道路規制や誘導を無視する車両や飛び出す原付バイクが居るので注意しないといけない。
バイクパート中、エアロポジションをしっかりと維持した。
疲れたり、体幹が疲弊するとエアロポジションを維持できなくなるが、そうなると空気抵抗となり余計に力を使い、悪循環になってしまう。
エアロポジションはパワーと空力のトレードオフになるが、僕はパワー4空力6の割合と考えてポジションを作っている。
ケイデンスは平地で89~93程度で回した。今年の前半までは一年半程ケイデンス100以上で走る回転型だったが「踏まずに踏む」という感覚を感じてからは90前後で走っている。
風が強いと評判だったが向かい風を感じることはなく、強風と聞かされていた橋の区間も気持ち抵抗がある程度の風だった。
折り返し地点の岬は登りだが、斜度は緩く、36-21付近で回して登る。ただフロントの変速は普段より丁寧に、絶対にチェーン落ちさせないよう気をつけた。
普段から山でトレーニングしているのでリフレッシュ気分で登れたが、周りの外国人などは辛そうだった。
折り返すと登ってきた道を下り、また別ルートを下る。
下りではポジションを低くし、漕がずに休憩とした。このポジションならば漕ぐより速い。
緩いコーナーの下りの為か落車が発生していた。
2ラップに入ると周りに人がいなくなってくる。コースアウトしているのでは?と不安になる。
この頃になると更に気温が上がりTTヘルメットで来た事を後悔した。台湾はロード用エアロヘルメットがベストだ思う。
100kmを過ぎるとだんだん思考が鈍くなってきて脚に力が入らなくなるのを感じ、熱中症になってると悟り、次のエイドで初めて止まり、ヘルメットの中と背中に水を掛けた。
走り始めると気化熱で身体が冷え始め、意識が定まり、脚が回り始める。岬の折り返しエイドでも止まり、身体を冷やした。
この頃周りの選手もエイドで止まり、身体を冷やしていた。
150km過ぎ、まだ脚に余裕はあるが熱中症でパワーが出ない。だが周りは足が切れ始めてきて、選手が少ないながらも抜くことが増えた。
そしてこの頃「カランッ」という金属音がして何か落ちたと思ったらリアケージCO2ボンベが落ちた。練習では緩むこともなかったので油断していた、ロックタイトを塗布するべきだった。
こうなるとCO2は一本だけ、ポンプもあるが小型なのでポンプで空気を入れようとすると相当なロスになる。とにかく「パンクするなよ」と祈りながら走った。またタイヤも次回のレースはパフォーマンスより確実なタイヤを選ぼうと思う。パフォーマンスが高くともパンクしたら元も子もない。
僕の使うチェーンルブはウエットで、塗膜を厚くしていたが夜露と水をかぶった影響かチェーンルブが切れかかっていた。
残り10kmとなると余りのジェルを全て飲み、脚のマッサージなどしてランに備えた。
完璧なペース配分とはいかないが、後半の失速も少なく良い感じに走れたと思う。
タイム5時間39分
- エイジ1位
- 男性38位
- 総合43位
レースタイム6時間57分
今年初めて出場した宮古島で100kmでタレて、130kmではエアロポジションも取れないくらいヘタれていた事を考えるとペース配分の技術が付いてきたと思う。
ちなみに宮古島のバイクパートは30km短い150kmでAvは30.9km/h
T2
ゴールでもある競技場に入りバイクをラックにかける。この時カテゴリ内でバイクは僕だけ、トップ通過と確認する。着替えテントに入ると5分10分前に先行していた選手がいる。着替えようとバッグを漁ると「トランジットバッグの中身が違う!」隣と取り間違えた。再びバイクラックに戻り取り直す。
この時点でも尿意は無かったが、後々混んだトイレに並ぶなら…とT2で済ます。
タイム3分36秒
ラン
補給食
- PowerBar パワージェル トロピカルフルーツ味10個
- Meitan サイクルチャージ・カフェインプラス200(CCC200) 1個
消化不良で下すのでランでも固形は食べない。
パワージェルは5km間隔で5kmで1個、10kmで2個飲む。PowerBarジェルの良い所はナトリウムが多く含まれているので糖質とナトリウムを一度に摂ることができる。
PowerBar パワーバー | プロダクト【POWERGEL-パワージェル】
サイクルチャージ・カフェインプラス200はカフェインが200mg入っている。カフェインには脂肪燃焼効率を上げたり、覚醒作用、鎮痛作用、血行促進という効能が科学的に証明されていて、これは200mgのカフェイン摂取で発揮されるとされている。これ以上摂取量を増やしても効果が大きくなるわけでは無い。
またカフェインの作用と時間には個人差があるが僕はカフェインが効きやすく、胃に何もなければ15分程度で効果が現れる。
この効能を最大限発揮させる為にレース中はここぞという時にカフェインを入れる。持続的に入れても良い様だがキマる感じが薄れるのでしない。これは20km地点で飲む。その為20kmではパワージェル1個とCCC200を1個飲むという事になる。
http://www.meitanhonpo.jp/product/athlete_products/energy/55/
PM13:00
時計を見る、スプリットタイムは7時間。ランを4時間以内で走れば目標タイムを達成出来る。今年の宮古島では3時間55分、皆生トライアスロンでは信号ストップ込みで4時間10分。ランはどんどんタイムが伸び、自身もあるので目標タイムは3時間45分だ。
だがいつもだとバイク後は脚が軽くて気づくとキロ4:00ペース位のペースで走ってしまうのに時計を見るとキロ5:00程度、この時点で確信した。
「熱中症になってる」
まだスタートして1km地点だが既に歩きや、止まって項垂れている人が多く目に入る。
ランはイーブンペースでは無く、元気なうちにタイムを稼ぐ作戦なのでキロ5:00ペースで走るが脚が重く重心を上手く使えない。
第2エイドのシラトンホテル前でエイドのコップの水をかぶるが体は回復せず、3kmを過ぎるとペースが5:30前後まで落ちてきた。目標タイムどころか4時間切りすら怪しい。下方修正をかけ、キロ6:00ペースで走る。
3ラップするランコースだが、コースの半分はアップダウンでかなりタフなコース。登りでは無理せず歩きを混ぜながら走った。
雲一つ無く、気温は30度を超えて無風、太陽が高く日陰も無い。エイド毎にコップの水をかける程度では効かない、かなりの暑さ。ドリンクのミネラルウォーターを「ボトルでくれ」と言いボトルの水を定期的に被りながら走った。
16km
競技場に戻って2周目に入る頃、水を思いっきりかぶっていたせいか、足に水ぶくれが出来て蹴り出すのが痛い。一度止まりインソールとソックスを絞って一度にたくさん水をかけないよう気をつけるようにした。
ただベースレイヤーのお陰かウェアは乾くのが速く、この日お腹を下すことはなかった。
シラトンホテル前を過ぎると意識が朦朧として焦点が定まらなくなり、言葉も発せなくなる。周りを見ると座り込んでる人が多い。「DNFしたい。諦めたい。」と思うようになり、日陰で横になりたい衝動に駆られる。だがここで止まってしまっては間違いなく気持ちが切れる。
「倒れたら諦めよう。それまでは走る」と気持ちを切り替える。もうタイムは気にしない「自分に負けず完走する」という一心で進む。
17.5km
頭が回らずスペシャルニーズを回収し忘れる。
20km
25km地点でブーストがかかるように「Meitan CCC200」を飲む。
今年の皆生トライアスロンでは30kmでブーストがかかるように25km地点で飲んだが、筋肉が限界に達してからではブーストが掛からないと分かったので余力のあるこのタイミングで摂る。
折り返し地点で安川さんとすれ違い、言葉を交わし元気をもらう。
23km
カフェインブーストがかかる。頭が覚醒し、気持ちが高ぶり、身体が軽くなった。胸を張り、小さくなっていたストライド量を大きく修正しダイナミックに走るようするとキロ7:30まで低下していたペースがキロ6:30まで盛り返すことが出来た。
行きで回収し忘れたスペシャルニーズを回収し、競技場に戻ってくる。
競技場のエイドで安川さんに追い付き1kmほど一緒に走るが大腿四頭筋が限界を迎え、千切れる。2周りも年が違うのに流石トライアスロン歴30年の大ベテラン。ランのフォームは体幹を使って安定した走り「まだまだだな」と自分の弱さを痛感しながら遠くなる背中を見る。
30km
大腿四頭筋が固まってしまい、筋肉の伸縮がうまくされずフォームを維持できない。ここで無理にペースを上げると攣ってしまい、走ることさえできなくなってしまう。
氷をトライパンツの中に挟み、脚を冷やして感覚を鈍らせるとマシになる。
今まで登りがキツかったが大腿四頭筋が固まってしまうと下りがキツイ。着地の衝撃を逃がせず太腿に激痛が走る。この頃になると日が落ち始め、水を掛ける必要が無くなった。
スプリットタイムを見ると10時間切りはまず無理だ。でもこのまま行けば3位以内には入ることができる。それを力に走り続ける。
35km
折り返す。残り7kmでこの地獄も終わる。改めてランを振り返る。
「それが限界か?このままゴールして悔いは無いか?」という台詞はレース中の辛い時自分に問いかける言葉。この言葉を考えた時、熱中症を言い訳に甘えてしまったと後悔した。
そう思うと涙が止まらなかった。熱中症でもボランティアに「ありがとう」と伝えることはできた。引きつっても笑顔を見せることはできた。ただ辛いから黙って物をもらうだけだった。
「このままでは後悔してしまう」そう思ってゴールまで走り切ろうと決める。
太腿はガチガチに固まり、フォームはグチャグチャ。着地する度に激痛が走るが走り続ける。歩くのはもうやめだ。
ゴール
街の方に戻ってくる。人が増え出し応援もいる。できる限りありがとうを伝え、笑顔を見せる。
競技場入り口に差し掛かるとツアーガイドの美保さんが居る。声をかけると「ああ!平子さん!エイジ1位ですよ!」と並走しながら言われる。理解出来なかった。
「本当ですか!?」「本当です」
「マジ!?」「はい!」
「KONAですか!?」「そうですよ!」
頭が真っ白になった。あんなに痛かった脚が痛くない。叫びながら走る。ゴールシーンは思いっきりカッコつけてやろうと思ってたが忘れた。叫びながらのゴール。長い一日が終わった。
タイム4時間42分
- エイジ1位
- 男性85位
- 総合98位
レースタイム11時間44分17秒
- エイジ1位
- 男性52位
- 総合58位
スイム、バイクは予想以上だったが、ランで崩壊してしまったのが悔しい。
でもバイクを抑えたからといってランが良くなった気はしない。とにかく暑過ぎた、普段から過酷な状況でトレーニングする必要があると痛感した。
来年はKONAがあるのでリベンジは出来ないが、また必ずリベンジしたいと思う。
ゴール後無料のマッサージを受ける。食事もある様だが現地の食べ物は味付けが苦手なのでそそくさとホテルに帰り、お風呂に入り、ウエットスーツを洗いっていると安川さんが帰宅、安川さんもエイジ3位した。
コンビニで晩御飯を大量に買い込むがレース中補給し続けていたからか意外と食べれない。
所でハワイクオリファイの支払いってVISAデビット使えるの?
不安になりながら眠りにについた。